市立釧路図書館のブログ

北海道釧路市幣舞町4-6にある市立釧路図書館のブログです。ウェブサイトはhttps://lib.city.kushiro.hokkaido.jp/からご覧いただけます。

CHANDLER CHANDLER CHANDLER

CHANDLER

日々いろいろな人と会いますが、もっと新しい本をたくさん買ってよ、なんて
ことを良く言われます。

そのたびに、今東西の本という本を扱うのが図書館ですので、「古い」が
充実しているのは良い図書館の証拠ですよ、とうそぶいてきました。

最初はなかば強がりでそう言ってきたのですが、図書館で働き始めてずい分
経つものですから、この頃は段々と本気でそう思うようになってきているよ
うです。

写真は、この図書館で所蔵するレイモンド・チャンドラーの著作をランダムに
並べたものですが、装丁ひとつを取っても、発刊された年代によってずい分と
印象が異なるものです。近年、作家・村上春樹が探偵・フィリップ・マーロウ
が主人公となる一連の作品の新訳を手がけ、ちょっとしたリバイバルブームが
沸き起こっています。

ところで、筆者は長く清水俊二が翻訳を手がけたマーロウものに親しんできた
ものですから、自分を「僕」と呼び出しそうな村上訳を読むと、少しのんびり
した印象を受けます。パルプ・マガジン('50年代くらいまで発刊された、粗悪
な紙に印刷されたアメリカの大衆雑誌の総称、チャンドラーも初期はそこで作品
を発表していた)を模した、ポップな表紙は良いのですが・・・。

そんな話を年長の友人にしたところ、いやいや俺は田中小実昌のべらんめえ調
じゃなきゃ、どうも調子が出ないと言います。さてさて。

釧路市内の図書館には、いろいろな時代、いろいろな翻訳者のマーロウものが
集まっています。(残念ながら、田中訳のハヤカワ・ポケット・ミステリは所蔵
がなく、今度、古書で手に入れたら、寄贈しておきます)

ひとつのコトを巡って、今と昔、此岸と彼岸を自由に行き来できる図書館。
いろいろと読み比べてみませんか?